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遺伝性疾患について

遺伝性疾患を減らすために重要なこと

遺伝性疾患とはその名のとおり先祖から子孫へ遺伝する疾患です。遺伝の形式は様々ですが、原因となる遺伝子が解読されている疾患はほとんどないため、遺伝性疾患を減らすには疾患の発症のないもの同士を交配させていくことが重要となります。しかし、遺伝性疾患には厄介なことに、本動物に疾患の発症がなくても遺伝性の素因を持っていて、子孫への疾患の運び屋になってしまうものが存在するのです。そのため、素因を持つものも交配させる際に除外していかないと遺伝性疾患を減らしていくのは困難です。
遺伝性疾患の多くは、動物がブリーダーさんからオーナーの皆さんの手に渡った後でないと診断することが出来ません。このことは、遺伝性疾患を減らしていく上で大きな意味合いをもちます。
以下に示している図は、A、B2頭の血統図を表しています。

Aの血統図

Aの血統図

Bの血統図

Bの血統図

AとBを繁殖に用いることによる遺伝性疾患に対するリスクを見てみると、A、Bとも正常で、両親と祖父母も正常なので、AとBの血統には差がなく、両方とも遺伝性疾患に対するリスクが低いように感じることが出来ます。
次にAとBの血統図に兄弟の情報を合わせた図を示しました。

Aの血統図(+兄弟)

Aの血統図(+兄弟)

Bの血統図(+兄弟)

Bの血統図(+兄弟)

いかがでしょうか。Bの兄弟は7頭中5頭が形成不全を発症しており、また親の兄弟など近親のものに形成不全の発症が多いことがわかります。すなわち、Bは形成不全の素因を持つ運び屋である可能性が高いと考えられます。このことから、AよりBのほうが形成不全に対するリスクが高く、繁殖には使わないほうが良いと考えられます。たとえ正常という診断結果であっても、遺伝性疾患を減らす上で、その結果が持つ意味合いには大きな違いがあります。
このように遺伝性疾患を減らしていくためには、両親、祖父母の情報はもちろんのこと、兄弟や近親系の情報が大変重要になります。
遺伝性疾患を減らしていくには、一つ一つの疾患に対し、すべての個体を検査し、また結果を公開登録し、その情報を使って疾患の発生のない、あるいは少ない血統を選んで交配させていかなくてはなりません。しかし、ほとんどの犬が検査を行なう時期にブリーダーからオーナーの手に渡ってしまっているため、オーナーの皆さんに、この検査、登録を行なっていただかなくてはなりません。
多くの方々の協力のもとに登録数が増えていけば、知りたい個体の先祖、子孫、兄弟などの近親のものの遺伝性疾患についての情報が得られるようになり、遺伝性疾患を減らすための大きな力となります。


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