膝蓋骨脱臼について(一般向け)
膝蓋骨脱臼とは
膝蓋骨脱臼とは、後肢の膝関節にある膝蓋骨(お皿) (図1、2 参照)がはずれてしまう疾患です。本来膝蓋骨は大腿骨の滑車溝に収まっていなくていけないものですが、様々な理由で、例えば先天的に脱臼している場合や滑車溝が浅い、繋いでいる靭帯の付き方や筋肉の異常、また交通事故などによる外傷によって後天的にも生じます。
膝蓋骨脱臼には内方脱臼と外方脱臼があり、小型犬には内方脱臼が多く、大型犬に外方脱臼が多いと言われていましたが、最近は大型犬の膝蓋骨内方脱臼もよく見られます。
また、犬は活発に動き回ることが好きなため、初期の段階で飼主が気付かず、無理をして悪化させてしまうケースも多いようです。
また、膝蓋骨脱臼はグレード1〜4に分類されます。
月齢的に早い犬の場合は、生後すぐ〜数カ月でなんとなく脚の運びがおかしかったりすることがありますが、その段階で飼主が気付かないことも多いようです。ワクチン摂取などで動物病院に行った際に、飼主の方から「この犬は膝蓋骨は大丈夫でしょうか?」と尋ねる事が必要です。どの病気もそうですが、早期発見・早期治療がとても大切です。
膝蓋骨脱臼の重症度
グレード1 | 指で押すとはずれる。はずれても自然に戻る。痛みは殆どない。 |
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グレード2 | 日常の生活で時々はずれる。指で押すと戻る。時々跛行する。 |
グレード3 | 常にはずれた状態、はめても直ぐはずれる。完全に跛行する |
グレード4 | 常にはずれた状態。指でははまらない。骨の変形もかなりある。 患肢にほとんど負重できない。 |
検査方法について
膝蓋骨の検査は、先ずは触診が一番重要です。獣医なら触診である程度の判断はつきます(図3:膝蓋骨脱臼の触診法 参照)。異常があると診断した場合はレントゲン検査(図4、5、6 参照)や、場合によってはCTなどの検査を行ないます。(X腺撮影では、はずれたお皿が撮影時に正常な位置に戻る事がある為、熟知した獣医師の触診が重要となります)
通常グレード1の場合は様子をみる。この場合1,2カ月に一度定期的に獣医の触診チェックを受けてることが重要。
グレート3以上の場合は、手術をすることが多い。
グレード3以上でそのまま放置していると、軟骨が削れたり(図7 参照)、靭帯が伸びたりしてしまうことがあります。手術の方法は多岐に渡り、滑車溝を深くするとか、膝蓋靱帯の付着する部位の骨を移動するとか、ケースバイケース。適切な時期に手術を行ない、上手くリハビリが進めば走れるようになることが多い。
手術後は安静にさせ、徐々にリハビリを行ないます。通常膝蓋骨は両足が悪いことが多く、両側の脚の手術が必要なことも多い。
家庭での注意点
先にも述べたように、膝蓋骨脱臼がある場合には、定期的に獣医師のチェックを受け、その他、体重が増加しないよう配慮し、室内飼いで床がフローリングのような滑りやすい場合は、じゅうたんを敷いたりすると良い。特に運動制限をしなくても良いが、過度のボール投げやフリスビーやアジリティーなどで急転回させるようなことは避けたほうがよい。特に、ドッグスポーツを始める前には、必ず獣医師に膝蓋骨や股関節などの検査・診断をしてもらってから始めることが推奨されます。
家庭での膝蓋骨&股関節チェックリスト
股関節・膝蓋骨共通項目
- 跛行(肢をひきずる)などはないか?
- 太ももの部分を両手で計り、左右対象に筋肉がついているか?
- 後肢を片方ずつ上げたとき、どちらか片方を上げるのを嫌がるようなことはないか?
- 犬を歩かせ、後方から見た場合左右対称に着地しているか、どちらかが巻くようなことはないか?
- 犬を歩かせ、側面から見たとき後肢の伸びは同じか?
- 伏せからスムーズに立ち上がれるか?
股関節の場合
- 腰を振りながら歩いていないか?
- 後肢がうさぎ飛びのように揃って走っていかないか?
- 横座りしていないか?
- 犬を立たせて、後肢を片方ずつ後ろに延ばしたとき、どちらか嫌がるようなことはないか?
- 高いところに飛び乗れるか?
膝蓋骨脱臼の場合
- 後肢をかばうようなことはないか?
- 歩いたり走ったりする際に突然ケンケンをすることはないか?
- 突然、後肢を時々後ろに伸ばすことはないか?
- 運動後に後肢をかばうことはないか?
- 立たせたとき、後肢の足先が内側や外側に向くことはないか?
- 肢を曲げたときに、膝の位置でコクッという感触が感じないか?