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股関節形成不全症の報告書に記載される評価結果について

股関節形成不全症のポイント評価の解釈について

JAHDの評価結果は左右の股関節のポイントが、それぞれ0から45までの数字で表記されます。点数が高いとそれだけCHDの特徴的な所見が多く存在しています。また、総スコアポイントとは左右の股関節のポイントの合計であり、0から90点で表されます。

CHDの病態は、はじめに「股関節の異常な緩み」が起こり、その結果として「股関節炎」が発すると考えられています。したがって、CHDの診断は、股関節の「緩みの程度」と「関節炎の有無(程度)」が主な診断基準となります。そして関節炎が起こっていることが明らかな場合はCHDであるという確定的な診断となります。JAHDスコアポイントは「緩みの程度」と「関節炎の程度」の両方について得点化しています。

スコアポイントによる結果をより解りやすくするためのコメントが報告書には付け加えられています。
レントゲン写真上に股関節の緩みがほとんどなく関節炎の所見も認められない場合、そのレントゲン写真上では股関節は正常であると判断することができるため、こういった場合には「股関節形成不全症の所見は認められません」とのコメントが付け加えられます。
一方、CHDの確定的な診断基準となる関節炎の所見が明らかなものについては、その程度により軽度、中程度、重度の「股関節形成不全症の所見が認められます」とのコメントが付け加えられます。
また、レントゲン写真上で以上のことが明らかでないものについてはコメントが付け加えられません。
したがって、このようなコメントが付け加えられていない場合はスコアポイントで判断を行なっていくことになります。

CHDのスコアポイントによる結果を理解しやすくするため、片側のスコアポイントと関節炎の関係を下記のグラフに示してあります。

CHDグラフ

CHDの確定的な診断基準となるのは関節炎の所見です。

片側の股関節のスコアポイントの見方の例

4~5 明らかに関節炎ではない確率は約60%、グレーゾーンは40%
8~9 明らかな関節炎である確率は約17%、関節炎ではない確率は約6%、
77%はグレーゾーン
12~13 明らかな関節炎である確率は約60%、グレーゾーンは40%
16~17 ほぼ間違いなく関節炎です

グレーゾーンの考え方

たとえば同じ10ポイントという診断結果が出た場合でも、レントゲン写真上に股関節の「緩み」が認められるが「関節炎」が認められない場合や「緩み」はわずかだが「関節炎」が軽度に認められる場合などさまざまなパターンがあります。
そのため、股関節の評価に関しては「完全に正常」と「完全に異常」の間に、グレーゾーンがあります。そのグレーゾーンの場合には股関節形成不全症による関節炎の程度は遺伝的要因に加え、様々な環境的要因(肥満、加齢、運動量など)の影響を受けます。特に同じ遺伝形質をもつ犬であっても、肥満度によってレントゲン写真上での股関節形成不全症の関節炎の程度に有意な差が出ます。そのため同じ犬でも、肥満や加齢によって合計ポイントが高くなることが予測されます。

繁殖に使用可能か否かを決めるスコアポイント値は、基本的には、ブリーダーの総合的な判断に委ねられます。
これは、犬のブリーディングはひとつの要素だけをターゲットにして繁殖はできないからです。その犬種の気質や体型や遺伝性疾患などの多くの要素を考慮し繁殖に用いるかを判断するのは、知識や経験の豊富なブリーダーの方の裁量によるわけです。ただし、現時点では繁殖の際に、関節炎の確率が非常に高いスコアポイントの場合には交配は控えることが推奨されます。また、理想的には、なるべくポイント値が小さい犬同士を交配させたほうが、CHDに対する淘汰圧は高くなり早期にCHDを減少させることが可能となります。このJAHDポイント制に慣れていただければ、股関節のグレード分類よりもポイント制のほうが、判断材料として用いやすいと思います。

スコアポイントで判断を行っていく場合に、もう一つの基準となるのが犬種ごとのスコアポイントの平均値および中央値です。この数値は、CHDを起こしやすい犬種と起こしにくい犬種があるため、各犬種で異なります。犬種ごとのこれらの数値は、日本国内で1犬種あたりの登録頭数(スコアポイントが付けられた頭数)がある程度増えないと正確な数値とはなりません。そのため現時点ではまだ正確な判断基準となる数値は公表しておりませんが、将来的には犬種ごとのスコアポイントの平均値および中央値を参考にして、交配の基準にしていただくことが可能となります。

今後、診断・登録件数が増えれば、犬種ごとにより正確な情報を得られるようになります。また、繁殖をするしないにかかわらず多くの犬が登録されることにより、繁殖を行なう犬の近親の情報が得られるようになり、より系統的に遺伝性疾患をコントロールしていくことが可能になります。そしてそのことは、今後生まれてくる仔犬たちに起こる遺伝性疾患を確実に減少させていきます。

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