股関節形成不全
犬の股関節形成不全症(Canine Hip dysplasia,CHD)の検査と評価方法
JAHD networkでは、犬の股関節形成不全に対し、イギリスの国際的な股関節評価機関である、BVA/KCスコアリングスキームのプロトコールを参考にし、股関節形成不全の際にレントゲン写真上に特徴的な変化の起こる股関節の所見を9つの項目に分け、それぞれの項目ごとにJAHDの評価基準に沿って0から5ポイントのスコアを付け、左右の股関節の全ての項目の総スコア(0から90ポイント)で股関節形成不全を評価します。
評価結果は総スコア(0から90ポイント)で表され、スコアが低いほど優れた股関節で、スコアが高いほど重度の股関節形成不全を示します。
※評価の対象年齢は12カ月齢以上
肘関節の撮影法
- 仰臥位保定する(鎮静または麻酔が推奨されるがなくてもかまいません)
- 大腿骨がテーブルと平行になるように後肢を伸展し、両後肢は互いに平行にする
- 肢を内旋させ、膝蓋骨が大腿骨の中心になるようにする
- 骨盤は対称性であること
- 閉鎖孔は左右対称であること
- 第七腰椎と膝関節を含む像であること
- 第七腰椎の棘突起は椎体の中央にくるようにする
- レントゲン撮影条件は寛骨臼背側縁が明瞭に観察できる条件に設定する
股関節伸展腹背方向のX線撮影法
※フィルムには、撮影年月日と撮影した犬の名前(血統名)、血統書登録番号、動物病院名あるいは団体名を記入してください。
股関節レントゲン写真の評価方法
股関節形成不全の評価は、股関節伸展位標準撮影法により撮影されたレントゲン写真上で片側の股関節の所見を9つの項目に分け、それぞれの項目をJAHDの評価基準に沿って0から5ポイントに得点付けし、左右の股関節で得点を出します。その左右の総計(0から90ポイント)で、股関節の状態を評価します。得点が上がるにつれ股関節形成不全の程度が進むことを示し、優れた股関節はより0ポイントに近く、重度の股関節形成不全はより90ポイントに近いことになります。
評価する9項目
- ノルベルグ アングル
- 寛骨臼/大腿骨頭面積比
- 寛骨臼頭側縁
- 実効寛骨臼頭側縁
- 寛骨臼窩
- 寛骨臼尾側縁
- モーガンライン
- 大腿骨頭と骨頚の骨増生
- 大腿骨頭の変形
【ノルベルグ アングル】
ノルベルグ アングルは、両側の大腿骨頭の中心(1)を結ぶ線(2)と大腿骨頭の中心(1)から寛骨臼頭側縁へ伸ばした線(3)とがなす角度(4)を測定することで得られる角度で、ノルベルグ アングル≧105°であれば正常とされます。
【寛骨臼/大腿骨頭面積比】
寛骨臼/大腿骨頭面積比は、
大腿骨頭を大腿骨頭の円弧に最も一致した1つの円として考え、
寛骨臼によってカバーされた大腿骨頭面積(B)÷大腿骨頭総面積(A)×100(%)
の式によって計算されます。
面積比≧50%であれば正常とされています。
【寛骨臼】
寛骨臼に関連した項目として
- 寛骨臼頭側縁
- 実効寛骨臼頭側縁
- 寛骨臼窩
- 寛骨臼尾側縁
の4項目についてレントゲン写真上の所見がそれぞれ0から5ポイントに得点付けされます。
【大腿骨】
大腿骨に関連した項目として
モーガンライン
大腿骨頭と骨頚の骨増生
大腿骨頭の変形
の3項目についてレントゲン写真上の所見がそれぞれ0から5ポイントに得点付けされます。
股関節のレントゲン写真の例
正しく撮影されたレントゲン写真
JAHDでの評価ができないレントゲン写真
以下のようなレントゲン写真は評価がつけられずに返却される可能性があります。
<例1>
<例2>
<例3>
<例4>
レントゲン写真上で骨盤の捻じれがみられると、評価に誤差が生じます。
評価に誤差
(良)遠い側>近い側
骨盤の捻じれるとレントゲン写真上で以下のようにみえます。
フィルムに近い側
腸骨翼広い、閉鎖孔小さい、寛骨臼浅い、恥骨縫合が近い
フィルムより遠い側
腸骨翼狭い、閉鎖孔拡大、寛骨臼深い、腰椎棘突起が近い
後肢が平行でないと
大腿骨頭が寛骨臼により覆われて見える
膝関節を内旋できてないと
大腿骨頚が短く見え、外反股に見える