肘関節形成不全
犬の肘関節形成不全症(Elbow dysplasia,ED)の検査と評価方法
JAHD networkでは、犬の肘関節形成不全症に対する国際的な組織である、International Elbow Working Group(IEWG)のプロトコールに沿って検査・評価いたします。
評価結果は正常、軽度の関節炎、中程度の関節炎、重度の関節炎の4段階に分類されます。
IEWGとは、多くの国の研究者が協調し犬の肘関節形成不全の有病率を低下させることを目的として設立された組織です。 IEWGは肘関節のスクリーニングのガイドラインを作成しており、JAHD networkでは、その基準に従って検査・評価をいたします。
※評価の対象年齢は12カ月齢以上
肘関節の撮影法
- 下の図のように、2方向、3ポジションでの撮影が推奨されますが、申請には屈曲位、通常位でのラテラル像が必要です。
- 撮影は左右の肘関節で、それぞれ行なう
- ラテラル像では撮影する肢を下側に横臥位保定する
- ラテラル像では内側 → 外側方向にレントゲン撮影する
- 左右の肢が解るようマーカーを入れる
- グリッドは使用しない
※ フィルムには、撮影年月日と撮影した犬の名前(血統名)、血統書登録番号、動物病院名あるいは団体名を入れてください。
JAHD networkの肘関節スクリーニングのプロトコールの概要
- レントゲンは左右の肘関節を撮影する
- レントゲン撮影時にはレントゲン台の上にカセッテを置き、グリッドを用いない
- 申請には、側面像(屈曲位と中立位)2つのレントゲン写真が必要
屈曲側面像:屈曲位 内側外側像:肘関節屈曲角度:約45°
側面像:中立位 内側外側像:肘関節屈曲角度:約110°
前後像:約15°回内位の前後像
注意点:側面像では、レントゲンのビームの中心を、肘関節の回旋軸に向け、上腕骨顆に2つの同心円ができるように撮影する。 - 評価の対象年齢は12ヵ月齢以上
- ントゲン写真には左右のマーカー、撮影年月日、犬の名前(血統書登録名)、血統書登録番号、動物病院名を入れる。それらはフィルムへ永久的に残る方法で入れられることが望ましい。
- 犬には個体識別を行なうことが望ましい。
関節炎の有無と程度あるいは以下の病変の存在を評価いたします。
a.尺骨内側鈎状突起分離
Malformed or fragmented medial coronoid process (FCP),
b.肘突起不癒合
Ununited anconeal process (UAP),
c.上腕骨内側顆の骨軟骨症
Osteochondrosis of medial aspect of humeral condyle
d.関節面の不一致
Incongruity of articular surface (INC)
e. その他の所見(軟部組織の石灰化陰影など)
Other observations, i.e. calcification in the soft tissue
肘関節の評価について
犬の肘関節の最大屈曲位内外方向側面像での評価
Grade 0 | 正常 | 肘関節内に骨棘がない |
---|---|---|
Grade I | 軽度の関節炎 | 肘関節内に高さ2mm以下の骨棘がある |
Grade II | 中程度の関節炎 | 肘関節内に高さ2-5mmの骨棘がある |
Grade III | 重度の関節炎 | 肘関節内に高さ5mm以上の骨棘がある |
特に以下の部位での骨棘の評価を中心に行ないます。
- 肘突起背側縁
- 上腕骨滑車の後外側面
- 尺骨滑車切痕
- 橈骨近位背側縁
- 鉤状突起背側縁
また、下記の所見も評価の対象となります。
- 尺骨滑車切痕の滑車下の硬化像の密度と範囲
- 内側鈎状突起の形状
- 関節面の適合不良